初心者でもわかる!ユークリッドの互除法の基本から応用まで完全解説

ユークリッドの互除法とは何か?基本概念を理解しよう

ユークリッドの互除法は、2つの整数の最大公約数を効率的に求める計算方法です。紀元前3世紀頃に古代ギリシャの数学者ユークリッドによって体系化されたこの手法は、現在でも数学の基礎として広く使われています。

この方法の最大の特徴は、大きな数同士でも比較的簡単に最大公約数を見つけられる点にあります。従来の約数を一つずつ調べる方法と比べて、計算回数を大幅に減らすことができるため、効率的で実用的な手法として重宝されています。

解答と解説

基本問題の解答:

問題1: 72と45の最大公約数

  • 72÷45=1あまり27
  • 45÷27=1あまり18
  • 27÷18=1あまり9
  • 18÷9=2あまり0
  • 答え:9

問題2: 91と65の最大公約数

  • 91÷65=1あまり26
  • 65÷26=2あまり13
  • 26÷13=2あまり0
  • 答え:13

問題3: 144と96の最大公約数

  • 144÷96=1あまり48
  • 96÷48=2あまり0
  • 答え:48

応用問題の解答例:

問題1: 1035と805の最大公約数

  • 1035÷805=1あまり230
  • 805÷230=3あまり115
  • 230÷115=2あまり0
  • 答え:115

問題4: 240, 180, 144の最大公約数

  • まず240と180:240÷180=1あまり60、180÷60=3あまり0 → 最大公約数は60
  • 次に60と144:144÷60=2あまり24、60÷24=2あまり12、24÷12=2あまり0 → 最大公約数は12
  • 答え:12

チャレンジ問題では、実際の状況に数学を応用する力が試されます。問題3では「箱に入れる最大個数」は1001と1365の最大公約数と同じ意味になります。このように、数学的な概念を現実の問題に置き換えて考える力を養うことが重要です。

よくある間違いと対策

ユークリッドの互除法を学習する際に、多くの学習者が陥りやすい間違いがあります。これらの典型的なミスパターンを理解し、適切な対策を講じることで、確実にマスターできるようになります。

計算ミスの典型例

余りの計算ミスは最も頻繁に発生する間違いです。特に大きな数を扱う際に起こりやすく、一度ミスをすると以降の計算すべてが間違ってしまいます。

例: 123÷47の余りを求める際

  • 正しい計算:123=47×2+29(余り29)
  • よくある間違い:123=47×2+31(余り31)

このようなミスを防ぐためには、必ず検算を行うことが重要です。「被除数=除数×商+余り」の関係を毎回確認しましょう。

数の順序を間違えるケースも多く見られます。ユークリッドの互除法では、前の段階の除数が次の被除数になり、前の段階の余りが次の除数になります。この順序を取り違えると、全く違う答えになってしまいます。

記録の不備も見落としがちな問題です。計算過程を頭の中だけで進めようとすると、途中で混乱してしまいます。必ず紙に書いて、各段階の結果を明確に記録することが大切です。

対策としては、計算用紙の使い方を工夫することをお勧めします。表形式で整理したり、各段階に番号を振ったりすることで、ミスを大幅に減らせます。

手順の混乱を避ける方法

ユークリッドの互除法の手順は機械的に実行できるため、一度正しい流れを身につければ迷うことはありません。しかし、学習初期には手順を混乱しやすいものです。

標準的な手順の確認:

  1. 大きい数÷小さい数を計算
  2. 商と余りを求める
  3. 小さい数が新しい被除数、余りが新しい除数
  4. 余りが0になるまで繰り返し
  5. 余りが0になった時の除数が答え

この手順を口に出して確認することで、体に覚えさせることができます。「大きい数を小さい数で割って、除数と余りで続ける」という基本パターンを意識しましょう。

計算表のテンプレートを用意しておくことも有効です:

段階計算式余り次の計算
1
2

このような表を使って練習することで、自然に正しい手順が身につきます。

混乱を避けるもう一つのコツは、小さな数から練習を始めることです。36と24、48と18のような扱いやすい数で手順に慣れてから、徐々に大きな数に挑戦しましょう。

検算と確認の重要性

ユークリッドの互除法では、計算結果が正しいかどうかを確認する方法がいくつかあります。これらの検算方法を身につけることで、自信を持って答えを出せるようになります。

基本的な検算方法:
各段階で「被除数=除数×商+余り」が成り立っているかを確認します。この関係が崩れている場合は、その段階で計算ミスが発生しています。

最終的な検算:
求めた最大公約数で元の2つの数を割ってみて、両方とも割り切れることを確認します。また、その商同士の最大公約数が1になることも確認できます。

別解による確認:
小さな数の場合は、従来の方法(約数を列挙する方法)でも最大公約数を求めて、答えが一致するか確認することができます。

逆算による確認:
最大公約数に、求めた商をそれぞれ掛けて、元の数に戻るかを確認する方法もあります。

検算の習慣をつけることで、計算ミスを早期に発見し、正確な答えにたどり着けるようになります。特に大きな数を扱う際や重要な場面では、必ず検算を行いましょう。

時間に余裕がある場合は、複数の方法で検算することをお勧めします。異なる角度から確認することで、より確実に正解を得られます。

まとめと今後の学習へのつながり

ユークリッドの互除法は、2000年以上にわたって数学の基礎として使われ続けている、極めて実用的で美しい手法です。この記事を通じて学んだ内容を振り返り、今後の数学学習にどのように活かしていけるかを確認しましょう。

学習内容の振り返り

この記事では、ユークリッドの互除法の基本概念から実用的な応用まで、幅広く学習しました。

基本概念の理解: 2つの整数の最大公約数を効率的に求める手法として、除法の原理を利用することを学びました。従来の約数列挙法と比較して、計算回数を大幅に削減できる優れた方法であることを確認しました。

計算手順の習得: 「大きい数÷小さい数」から始まり、「除数と余りで続ける」という機械的な手順を、具体的な数値例を通じて身につけました。48と18、1001と364などの例を通じて、実際の計算プロセスを体験しました。

実践的な応用: 分数の約分、プログラミング、暗号理論など、現代社会の様々な分野でこの手法が活用されていることを理解しました。古代ギリシャの数学が現代の最先端技術を支えているという事実は、基礎学習の重要性を物語っています。

問題解決能力の向上: 基礎から応用、チャレンジレベルまで段階的な演習を通じて、様々な難易度の問題に対応できる力を養いました。計算ミスの予防法や検算の重要性も学習しました。

これらの学習により、単なる計算テクニックを超えて、数学的思考力の基盤を築くことができました。

関連する数学分野との接続

ユークリッドの互除法は、数学の様々な分野と密接に関連しています。この手法をマスターすることで、より高度な数学領域への扉が開かれます。

整数論では、素因数分解合同式の学習において、ユークリッドの互除法が基礎的な道具として使われます。特に拡張ユークリッドの互除法は、整数論の重要なテーマである一次不定方程式の解法に直結します。

代数学においても、多項式の最大公約数を求める際に、この手法の発展形が使用されます。高校や大学で学ぶ因数分解の理論的背景にも、ユークリッドの互除法の考え方が息づいています。

数論的関数の分野では、オイラーのφ関数メビウス関数などの重要な概念と関連があります。これらは大学レベルの数学で扱われる高度な内容ですが、基礎はユークリッドの互除法にあります。

計算複雑度理論では、アルゴリズムの効率性を評価する際の基準として、ユークリッドの互除法の計算量が参照されます。情報科学を学ぶ上でも重要な概念です。

発展的な学習への橋渡し

拡張ユークリッドの互除法は、最大公約数だけでなく、ベズーの等式を満たす整数解も求められる発展的な手法です。この技術は暗号理論数論的アルゴリズムで不可欠な要素となっています。

連分数の理論との関連も深く、ユークリッドの互除法の計算過程から連分数展開を構成することができます。これは近似理論数値解析の分野で重要な概念です。

群論環論などの抽象代数においても、最大公約数の概念が一般化され、より抽象的な数学構造の理解に役立ちます。大学以降の数学学習では、これらの高度な概念に出会うことになります。

応用数学の分野では、グラフ理論組み合わせ論において、周期性や対称性の計算でユークリッドの互除法が応用されます。

プログラミングを深く学ぶ際には、この手法をベースとした様々なアルゴリズム設計技法を習得することになります。効率的なアルゴリズムの設計思想を理解する上で、重要な基礎となります。

今回学習した内容は、これらの発展的な学習領域への確実な足がかりとなります。基礎をしっかりと理解していることで、より高度な概念も自然に受け入れられるようになるでしょう。

数学学習においては、一つひとつの概念が相互に関連し合っています。ユークリッドの互除法という古典的で美しい手法を通じて、数学の奥深さと実用性を感じ取り、さらなる学習への意欲を高めていただければと思います。ユークリッドの互除法の定義と原理

ユークリッドの互除法は、除法の原理を利用した計算手法です。2つの正の整数aとb(a≥b)において、aをbで割った余りをrとすると、aとbの最大公約数は、bとrの最大公約数と等しくなるという性質を活用します。

この原理は「最大公約数の性質」として知られており、数学的に証明されています。具体的には、gcd(a,b) = gcd(b,r)という関係が成り立ちます。ここでgcdは最大公約数を表す記号です。

この性質を繰り返し適用することで、最終的に余りが0になるまで計算を続けます。余りが0になったときの除数が、元の2つの数の最大公約数となります。この仕組みにより、複雑な計算を段階的に簡単にしていけるのです。

計算過程では必ず数が小さくなっていくため、有限回の操作で必ず答えにたどり着きます。この確実性も、ユークリッドの互除法が信頼される理由の一つといえるでしょう。

最大公約数を求める従来の方法との違い

従来の最大公約数を求める方法では、それぞれの数の約数をすべて書き出して、共通する約数の中から最大のものを見つける必要がありました。例えば、48と18の最大公約数を求める場合、48の約数(1,2,3,4,6,8,12,16,24,48)と18の約数(1,2,3,6,9,18)を全て列挙し、共通約数(1,2,3,6)から最大値6を選ぶという手順です。

しかし、この方法は数が大きくなると非常に時間がかかります。例えば、1001と1365といった大きな数の場合、約数を全て書き出すのは現実的ではありません。

ユークリッドの互除法なら、除算と余りの計算だけで効率的に答えを導けます。1365÷1001=1余り364、1001÷364=2余り273というように、段階的に数を小さくしながら計算を進められるため、大きな数でも短時間で処理できます。

この効率性の違いは、特にプログラミング暗号理論などの分野で重要になります。コンピュータでの高速計算や、数万桁の巨大な数を扱う場合には、ユークリッドの互除法の威力が発揮されるのです。

古代から現代まで受け継がれる数学の知恵

ユークリッド(紀元前365年頃-紀元前275年頃)は古代ギリシャの数学者で、彼の著作「原論」は数学史上最も影響力のある書物の一つとされています。この中で紹介されたユークリッドの互除法は、2000年以上経った現在でも全く同じ形で使われ続けています。

古代ギリシャ時代から現代まで、この手法が変わらず使われている理由は、その普遍性効率性にあります。計算方法がシンプルで理解しやすく、かつ確実に答えが得られるため、時代を超えて多くの数学者や学習者に愛用されてきました。

現代では、この古典的な手法がコンピュータサイエンスの基礎としても活用されています。プログラミング言語の標準ライブラリに組み込まれたり、RSA暗号などの現代暗号技術の中核部分で使われたりと、古代の知恵が最先端技術を支えているのです。

このように、数学の基本的な原理は時代を問わず価値を持ち続けることを、ユークリッドの互除法は見事に体現しています。学習する際は、この歴史的な背景も意識すると、より深い理解につながるでしょう。

計算手順を実際の例で学ぼう

ユークリッドの互除法の計算手順は、一度覚えてしまえば機械的に実行できます。ここでは具体的な数値例を使って、実際の計算プロセスを段階的に解説していきます。基本的な流れを理解すれば、どんな数の組み合わせでも同じ手順で処理できるようになります。

基本的な計算プロセス

ユークリッドの互除法の基本的な計算手順は以下の通りです:

手順1: 大きい数を小さい数で割り、商と余りを求める
手順2: 除数(小さい数)を被除数とし、余りを新しい除数として再び除算する
手順3: 余りが0になるまで手順2を繰り返す
手順4: 余りが0になったときの除数が最大公約数

この手順はアルゴリズムとして完全に定型化されているため、計算ミスを避けやすく、確実に正解にたどり着けます。重要なのは、各段階で「被除数÷除数=商あまり余り」の形式を正確に記録することです。

計算過程で出てくる数は必ず小さくなっていくため、無限に続くことはありません。通常は数回から十数回の除算で完了します。この有限性も、ユークリッドの互除法の大きな利点の一つです。

練習を重ねることで、この一連の流れが自然に身につき、スムーズに計算できるようになります。最初は丁寧に各段階を確認しながら進めることが大切です。

48と18の最大公約数を求める例

48と18の最大公約数ユークリッドの互除法で求めてみましょう。

第1段階: 48÷18=2あまり12
第2段階: 18÷12=1あまり6
第3段階: 12÷6=2あまり0

余りが0になったので、この時点の除数である6が48と18の最大公約数です。

この計算を表形式で整理すると以下のようになります:

段階被除数除数余り
14818212
2181216
312620

このように表形式で整理すると、計算過程が一目で分かり、検算もしやすくなります。各段階で「被除数=除数×商+余り」の関係が成り立っているかを確認すれば、計算ミスを防げます。

従来の方法なら48と18の約数をすべて列挙する必要がありましたが、ユークリッドの互除法なら3回の除算で答えにたどり着けました。この効率性の違いが、この手法の価値を物語っています。

より大きな数での計算例(1001と364)

次に、より大きな数での計算例として、1001と364の最大公約数を求めてみましょう。

第1段階: 1001÷364=2あまり273
第2段階: 364÷273=1あまり91
第3段階: 273÷91=3あまり0

余りが0になったので、91が1001と364の最大公約数です。

計算過程を詳しく見てみます:

  • 1001÷364:1001=364×2+273なので、商2、余り273
  • 364÷273:364=273×1+91なので、商1、余り91
  • 273÷91:273=91×3+0なので、商3、余り0

大きな数でも、基本的な手順は全く変わりません。重要なのは各段階での除算を正確に行うことです。電卓を使って計算しても構いませんが、手計算で行う場合は筆算をしっかりと行いましょう。

この例では3回の除算で完了しましたが、数の組み合わせによっては5回、6回と続く場合もあります。しかし、必ず有限回で終了するため、根気よく計算を続ければ確実に答えにたどり着けます。

計算時の注意点とコツ

ユークリッドの互除法を正確に実行するためのポイントをまとめました:

計算の正確性: 各段階での除算は丁寧に行いましょう。特に余りの計算でミスが起こりやすいので、「被除数=除数×商+余り」の関係を必ず確認してください。

順序の管理: 次の段階では、前の段階の除数が新しい被除数になり、余りが新しい除数になります。この順序を間違えないよう注意しましょう。

記録の整理: 計算過程を表や式で整理して記録することで、途中で混乱することを防げます。また、検算時にも役立ちます。

終了条件の確認: 余りが0になった時点で計算終了です。その時の除数が最大公約数となります。

練習のコツとしては、最初は小さな数から始めて、徐々に大きな数に挑戦することです。また、答えが分かっている問題で練習すると、自分の計算が正しいかどうかを確認できます。慣れてくれば、この手法の便利さと効率性を実感できるはずです。

実践問題で理解を深めよう

ユークリッドの互除法をしっかりと身につけるためには、実際に問題を解いて練習することが重要です。理論を理解しただけでは実際の計算でつまずくことがあるため、段階的に難易度を上げながら様々なパターンの問題に取り組んでいきましょう。

基礎レベルの練習問題

まずは基礎レベルの問題から始めましょう。比較的小さな数を使った問題で、計算手順に慣れることが目標です。

問題1: 60と24の最大公約数を求めなさい。

解答プロセス:

  • 60÷24=2あまり12
  • 24÷12=2あまり0
  • 答え:12

問題2: 84と36の最大公約数を求めなさい。

解答プロセス:

  • 84÷36=2あまり12
  • 36÷12=3あまり0
  • 答え:12

これらの基礎問題では、2〜3回の除算で答えが出ます。重要なのは各段階での計算を正確に行うことです。余りの計算でミスをしやすいので、必ず検算を行いましょう。

基礎レベルをマスターするコツは、同じような規模の数で繰り返し練習することです。計算パターンに慣れることで、より複雑な問題にも対応できるようになります。

中級レベルの練習問題

中級レベルでは、やや大きな数や計算回数が多くなる問題に挑戦します。

問題1: 252と168の最大公約数を求めなさい。

解答プロセス:

  • 252÷168=1あまり84
  • 168÷84=2あまり0
  • 答え:84

問題2: 1071と462の最大公約数を求めなさい。

解答プロセス:

  • 1071÷462=2あまり147
  • 462÷147=3あまり21
  • 147÷21=7あまり0
  • 答え:21

中級レベルでは計算回数が増えるため、途中で混乱しないよう計算過程をしっかりと記録することが大切です。表形式で整理すると、ミスを防ぎやすくなります。

また、この段階では電卓を使っても構いません。重要なのはユークリッドの互除法の手順を正確に実行することであり、計算速度よりも正確性を重視しましょう。

上級レベルの練習問題

上級レベルでは、大きな数や特殊なケースを含む問題に取り組みます。

問題1: 2024と1518の最大公約数を求めなさい。

解答プロセス:

  • 2024÷1518=1あまり506
  • 1518÷506=3あまり0
  • 答え:506

問題2: 3675と2940の最大公約数を求めなさい。

解答プロセス:

  • 3675÷2940=1あまり735
  • 2940÷735=4あまり0
  • 答え:735

上級レベルでは、一見複雑に見える大きな数でも、ユークリッドの互除法を使えば効率的に解けることを実感できます。従来の方法では非常に困難な問題も、この手法なら短時間で処理できます。

大きな数を扱う際は、計算ミスを避けるために筆算を丁寧に行うか、電卓を活用することをお勧めします。重要なのは手順を正確に実行することです。

応用問題:3つ以上の数の最大公約数

ユークリッドの互除法は3つ以上の数の最大公約数を求める際にも活用できます。

問題: 180, 252, 324の最大公約数を求めなさい。

解法: まず2つの数の最大公約数を求め、その結果と3つ目の数の最大公約数を求めます。

手順1: 180と252の最大公約数を求める

  • 252÷180=1あまり72
  • 180÷72=2あまり36
  • 72÷36=2あまり0
  • 180と252の最大公約数は36

手順2: 36と324の最大公約数を求める

  • 324÷36=9あまり0
  • 36と324の最大公約数は36

答え: 180, 252, 324の最大公約数は36

この方法は4つ以上の数でも同様に適用できます。順次2つずつ組み合わせて計算を進めることで、任意の個数の数の最大公約数を求められます。複数の数を扱う際は、計算順序を明確にして、段階的に進めることが重要です。

数学以外での活用場面

ユークリッドの互除法は純粋な数学の計算だけでなく、実生活や様々な学問分野で幅広く活用されています。この古典的な手法が現代社会でどのように役立っているかを知ることで、数学学習の意義をより深く理解できるでしょう。

分数の約分での利用

分数の約分は、ユークリッドの互除法の最も身近な応用例の一つです。分数を最も簡単な形にするためには、分子と分母の最大公約数で両方を割る必要があります。

例えば、分数 252/168 を約分する場合:

  • 252と168の最大公約数をユークリッドの互除法で求める
  • 252÷168=1あまり84
  • 168÷84=2あまり0
  • 最大公約数は84

したがって、252/168 = (252÷84)/(168÷84) = 3/2 となります。

従来の方法では分子と分母の約数を全て書き出す必要がありましたが、ユークリッドの互除法を使えば効率的に約分できます。特に大きな数の分数を扱う際には、この手法の威力が発揮されます。

数学の問題だけでなく、料理のレシピの分量調整や建築設計での比率計算など、日常生活でも分数の約分は頻繁に使われています。正確で効率的な約分ができることは、実用的なスキルとして非常に価値があります。

コンピュータプログラミングでの応用

プログラミングの世界では、ユークリッドの互除法は基本的なアルゴリズムとして広く使われています。多くのプログラミング言語で標準ライブラリとして実装されており、開発者が日常的に利用しています。

ゲーム開発では、画面解像度の比率計算や、キャラクターの移動パターンの周期計算などで活用されます。例えば、1920×1080の画面と1280×720の画面の比率を求める際に使用されます。

データ処理においても重要な役割を果たします。大量のデータを効率的に処理するため、配列のサイズ調整やハッシュテーブルの設計で最大公約数の計算が必要になる場合があります。

また、アルゴリズムの時間計算量がO(log min(a,b))と非常に効率的であるため、大規模なシステムでも安心して使用できます。この効率性により、リアルタイム処理が要求されるシステムでも実用的に活用されています。

プログラミングを学ぶ学生にとって、ユークリッドの互除法はアルゴリズム思考を身につける良い教材でもあります。

暗号理論と情報セキュリティ

現代の情報セキュリティにおいて、ユークリッドの互除法は極めて重要な役割を担っています。特にRSA暗号などの公開鍵暗号方式では、この古典的な手法が中核技術として使われています。

RSA暗号では、非常に大きな素数の積を使った数値での計算が必要になります。この際、拡張ユークリッドの互除法という発展形が使用され、暗号キーの生成において不可欠な計算を担当しています。

デジタル署名の仕組みでも同様に活用されており、インターネット上での安全な通信を支える基盤技術となっています。オンラインバンキング、電子商取引、メール暗号化など、現代社会のデジタルインフラの多くがこの技術に依存しています。

ブロックチェーン技術でも、ハッシュ値の計算や電子署名の検証において間接的に使用されています。暗号通貨の取引やNFTの認証システムなど、最新技術の基盤にも古代ギリシャの数学が息づいているのです。

このように、2000年以上前の数学的発見が現代の最先端技術を支えているという事実は、基礎学習の重要性を物語っています。

その他の実用的な場面

音楽理論では、音程和音の関係を理解する際にユークリッドの互除法が応用されます。例えば、2つの音の周波数の比を最も簡単な整数比で表現する際に使用されます。

建築・設計分野では、黄金比の計算や、建物の寸法比率の設計において活用されます。美しい比率を数学的に求める際に、この手法が重要な役割を果たしています。

タイル張り問題など、組み合わせ論の分野でも応用されています。限られたサイズのタイルで平面を埋め尽くす問題や、パズルゲームの設計において数学的な計算が必要になります。

統計学では、標本サイズの決定や信頼区間の計算において、間接的にこの手法が使われることがあります。

経済学においても、市場サイクルの分析や投資ポートフォリオの最適化において、周期性の計算で応用される場合があります。

これらの例からわかるように、ユークリッドの互除法は単なる数学の計算手法を超えて、現代社会の様々な分野で実用的価値を持っています。基礎的な数学スキルが将来どのように役立つかを理解することで、学習へのモチベーション向上にもつながるでしょう。

理解度を確認するための演習問題

学習した内容を確実に身につけるために、様々なレベルの演習問題に取り組みましょう。問題を解く際は、計算過程を丁寧に記録し、答えだけでなく解法も含めて理解することが重要です。

基本問題集

基本レベルでは、ユークリッドの互除法の手順を確実に身につけることを目標とします。

問題1: 72と45の最大公約数を求めなさい。

問題2: 91と65の最大公約数を求めなさい。

問題3: 144と96の最大公約数を求めなさい。

問題4: 105と70の最大公約数を求めなさい。

問題5: 126と84の最大公約数を求めなさい。

これらの基本問題では、2〜4回程度の除算で答えが出るように設計されています。各問題で計算手順を正確に実行し、余りの計算でミスをしないよう注意しましょう。

解答の際は、各段階で「被除数÷除数=商あまり余り」の形式で記録することをお勧めします。また、最終的に「被除数=除数×商+余り」の関係が成り立っているかを確認すると、計算ミスを防げます。

基本問題をスムーズに解けるようになったら、中級レベルに進みましょう。確実性を重視し、急がずに丁寧に取り組むことが上達のコツです。

応用問題集

応用レベルでは、やや複雑な計算や特殊なケースを含む問題に挑戦します。

問題1: 1035と805の最大公約数を求めなさい。

問題2: 2107と1309の最大公約数を求めなさい。

問題3: 3276と2148の最大公約数を求めなさい。

問題4: 次の3つの数の最大公約数を求めなさい:240, 180, 144

問題5: 分数 588/441 を約分しなさい。

応用問題では計算回数が増えるため、途中で混乱しないよう表形式で計算過程を整理することをお勧めします。

段階被除数除数余り
1
2

このような表を作成して、各段階の計算結果を記録していけば、ミスを防ぎやすくなります。

3つ以上の数の最大公約数を求める問題では、まず2つの数から計算を始め、その結果と3つ目の数の最大公約数を求めるという手順を踏みます。分数の約分問題では、分子と分母の最大公約数を求めてから約分を行います。

チャレンジ問題集

チャレンジレベルでは、大きな数や実用的な場面を想定した問題に取り組みます。

問題1: 12376と8932の最大公約数を求めなさい。

問題2: 45927と33649の最大公約数を求めなさい。

問題3: ある工場で、Aの部品を1001個、Bの部品を1365個作りました。これらを同じ数ずつ箱に入れて、余りが出ないようにしたいと思います。1箱に入れられる最大の個数は何個ですか?

問題4: 長方形の土地で、縦2520m、横1890mの土地があります。この土地を正方形の区画に分割したいと思います。正方形の一辺の長さの最大値は何mですか?

問題5: 2つの歯車があり、一方は168の歯、もう一方は112の歯を持っています。両方の歯車が同時に回転を始めたとき、再び同じ位置に戻るまでに、それぞれの歯車は何回転しますか?

チャレンジ問題では、実生活での応用を意識した設定になっています。数学の計算だけでなく、問題文を正確に理解し、何を求められているかを把握する力も必要になります。

大きな数を扱う際は、計算ミスを避けるために電卓を使用しても構いません。重要なのはユークリッドの互除法の手順を正確に適用することです。

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