
置換積分の基本から応用まで|解き方のコツと練習問題で完全マスター
置換積分とは何か|基本概念と重要性
置換積分は、微分積分学における重要な積分技法の一つです。複雑な関数の積分を、より簡単な形に変換して計算する手法として、数学の学習において欠かせない技術となっています。特に高校数学から大学数学への橋渡しとなる重要な概念で、多くの学生が最初に学ぶ高度な積分テクニックです。
置換積分の定義と基本的な考え方
置換積分とは、積分変数を別の変数に置き換えることで、積分の計算を簡単にする方法です。この技法は、合成関数の微分の逆操作として理解できます。
基本的な置換積分の公式は以下のように表されます:
∫f(g(x))g'(x)dx = ∫f(u)du (ただし、u = g(x))
この公式の意味を理解するために、具体例を見てみましょう。例えば、∫2x(x²+1)³dx という積分を考えます。この場合、x²+1 の部分を u として置換すると、du/dx = 2x となり、積分が ∫u³du という簡単な形に変わります。
置換積分の基本的な流れは次の通りです:
- 置換する部分を決める(u = g(x))
- du/dx を計算する
- 元の積分をuで表現する
- uに関する積分を計算する
- 最後にuを元の変数に戻す
この手順を理解することで、多くの複雑な積分問題を効率的に解くことができるようになります。
置換積分が数学学習で重要な理由
置換積分は、単なる計算技法以上の意味を持っています。この技法を習得することで、数学的思考力が大幅に向上します。
まず、問題解決能力の向上という観点から見ると、置換積分は複雑な問題を単純化する思考プロセスを身につけさせてくれます。どの部分を置換すべきかを判断する力は、数学の様々な分野で応用できる重要なスキルです。
次に、関数の理解が深まるという効果があります。置換積分を学ぶ過程で、合成関数、逆関数、微分の関係性についてより深く理解できるようになります。これらの概念は、高等数学の基礎として非常に重要です。
さらに、計算の効率化という実用的な利点もあります。置換積分を使わずに積分を試みると、非常に複雑な計算になったり、場合によっては解けなかったりする問題も、適切な置換により簡単に解けることがあります。
将来の数学学習への準備という点でも、置換積分は重要です。微分方程式、フーリエ解析、確率論など、多くの高等数学分野で置換積分の考え方が活用されます。
置換積分を学ぶ前に必要な基礎知識
置換積分を効果的に学習するためには、いくつかの基礎知識が必要です。これらの知識を確実に身につけておくことで、置換積分の理解がスムーズになります。
微分の基本公式は必須の知識です。特に以下の公式は頻繁に使用されます:
- (xⁿ)’ = nxⁿ⁻¹
- (sin x)’ = cos x
- (cos x)’ = -sin x
- (eˣ)’ = eˣ
- (ln x)’ = 1/x
これらの公式を逆から見た基本的な積分公式も重要です。置換積分では、この積分公式を組み合わせて使用することが多いためです。
合成関数の微分法(連鎖律)の理解も不可欠です。f(g(x))の微分は f'(g(x))・g'(x) となることを理解していれば、置換積分の仕組みがより明確になります。
代数的な計算能力も重要な要素です。方程式の変形、分数の約分、因数分解などの基本的な代数操作を確実に行えることが、置換積分の成功につながります。
最後に、積分の基本概念についても復習しておきましょう。積分が面積を求める操作であることや、微分の逆操作であることを理解していると、置換積分の意味がより深く理解できます。
置換積分の基本公式と計算手順
置換積分の計算を正確に行うためには、基本公式の理解と体系的な計算手順の習得が不可欠です。ここでは、置換積分の核となる公式と、実際の計算で使用する具体的な手順について詳しく解説します。
置換積分の基本公式の詳細解説
置換積分の基本公式は、合成関数の積分を簡単にするための重要な道具です。公式を数学的に正確に表現すると以下のようになります:
定積分の場合:
∫[a to b] f(g(x))g'(x)dx = ∫[g(a) to g(b)] f(u)du
不定積分の場合:
∫f(g(x))g'(x)dx = ∫f(u)du = F(u) + C = F(g(x)) + C
この公式の理論的背景を理解するために、微分の連鎖律を思い出してみましょう。F(g(x))を微分すると、F'(g(x))・g'(x)となります。これは置換積分の被積分関数の形と一致しており、積分と微分が逆操作であることを示しています。
公式の使用条件も重要なポイントです:
- f(g(x))の形で表現できること
- g'(x)が積分式に含まれていること
- g(x)が微分可能であること
これらの条件を満たす場合に、置換積分を効果的に使用できます。
計算手順の体系的な説明
置換積分の計算手順は、以下の5つのステップに分けて理解することができます。各ステップを丁寧に実行することで、ミスを防ぎ、確実に答えを導くことができます。
ステップ1:置換する部分の選択
まず、積分式を注意深く観察し、置換すべき部分を特定します。一般的には、以下のような部分を置換の候補として考えます:
- 複雑な関数の引数部分
- 指数関数の指数部分
- 対数関数の真数部分
- 三角関数の引数部分
ステップ2:置換式の設定
選択した部分を u として置換します。u = g(x) の形で置換式を明確に書き出すことが重要です。
ステップ3:微分の計算
du/dx = g'(x) を計算し、dx = du/g'(x) の関係を求めます。この関係式を使って、元の積分式のdx部分をduで表現します。
ステップ4:積分式の変換
元の積分式をuを用いて表現し直します。この段階で、積分式がより簡単な形になっていることを確認しましょう。
ステップ5:積分の実行と逆置換
uに関する積分を実行した後、u = g(x)を使って元の変数に戻します。不定積分の場合は積分定数Cを忘れずに付けます。
実際の計算例を使った手順の確認
具体的な例を使って、置換積分の計算手順を確認してみましょう。
例題:∫2x(x²+1)⁵dx を計算する
ステップ1: x²+1 の部分を置換の対象として選択
理由:この部分が5乗されており、かつその微分である2xが積分式に含まれているため
ステップ2: u = x²+1 と置換
ステップ3: du/dx = 2x より、dx = du/(2x)
したがって、2x dx = du
ステップ4: 積分式を変換
∫2x(x²+1)⁵dx = ∫u⁵du
ステップ5: 積分を実行
∫u⁵du = u⁶/6 + C = (x²+1)⁶/6 + C
この例では、置換積分により複雑な積分が非常に簡単になりました。
別の例:∫sin(3x)dx を計算する
ステップ1: 3x の部分を置換対象として選択
ステップ2: u = 3x と置換
ステップ3: du/dx = 3 より、dx = du/3
ステップ4: ∫sin(3x)dx = ∫sin(u)・(du/3) = (1/3)∫sin(u)du
ステップ5: (1/3)∫sin(u)du = -(1/3)cos(u) + C = -(1/3)cos(3x) + C
これらの例を通じて、置換積分の手順を体系的に理解し、様々な問題に応用できるようになります。
置換積分の具体的な解法テクニック
置換積分を効果的に使用するためには、様々な関数の形に応じた具体的な解法テクニックを身につける必要があります。ここでは、実際の問題でよく遭遇するパターン別の解法方法を詳しく解説します。
三角関数を含む置換積分のテクニック
三角関数の置換積分は、数学の試験で頻出の問題タイプです。三角関数の性質を活用した効果的な解法テクニックを習得することで、多くの問題をスムーズに解くことができます。
基本的な三角関数の置換パターン:
積分形式 | 置換方法 | 注意点 |
---|---|---|
∫sin(ax+b)dx | u = ax+b | du = a dx |
∫cos(ax+b)dx | u = ax+b | du = a dx |
∫tan(ax+b)dx | u = ax+b | du = a dx |
このテーブルに示したパターンは、三角関数の置換積分の基本となります。
具体例1:∫x sin(x²)dx
この問題では、x² の部分を置換します:
- u = x² とおくと、du = 2x dx
- したがって、x dx = du/2
- ∫x sin(x²)dx = ∫sin(u)・(du/2) = -(1/2)cos(u) + C = -(1/2)cos(x²) + C
具体例2:∫cos³x sin x dx
この場合、cos x を u として置換します:
- u = cos x とおくと、du = -sin x dx
- したがって、sin x dx = -du
- ∫cos³x sin x dx = ∫u³(-du) = -u⁴/4 + C = -(cos⁴x)/4 + C
三角関数の合成を利用した置換も重要なテクニックです。例えば、a sin x + b cos x の形が現れた場合、三角関数の合成公式を使って一つの三角関数に変換してから置換することが効果的です。
指数関数・対数関数の置換積分
指数関数と対数関数の置換積分は、関数の性質を深く理解していると非常に解きやすくなります。これらの関数の微分・積分の性質を活用した解法テクニックを紹介します。
指数関数の置換積分の基本パターン:
例題1:∫xe^(x²)dx
この問題では指数部分を置換します:
- u = x² とおくと、du = 2x dx
- したがって、x dx = du/2
- ∫xe^(x²)dx = ∫e^u・(du/2) = (1/2)e^u + C = (1/2)e^(x²) + C
例題2:∫e^x/(e^x + 1)dx
この場合、分母に注目して置換します:
- u = e^x + 1 とおくと、du = e^x dx
- ∫e^x/(e^x + 1)dx = ∫(1/u)du = ln|u| + C = ln(e^x + 1) + C
対数関数の置換積分では、対数の性質を活用することが重要です:
例題3:∫x ln x dx
これは部分積分と置換積分を組み合わせた問題です:
- 部分積分を使用:u = ln x, dv = x dx
- du = (1/x)dx, v = x²/2
- ∫x ln x dx = (x²/2)ln x – ∫(x²/2)・(1/x)dx = (x²/2)ln x – x²/4 + C
分数関数の置換積分テクニック
分数関数の置換積分は、分母の形に注目した置換が鍵となります。分母の微分が分子に含まれているかどうかを確認することが重要なポイントです。
基本的な分数関数の置換パターン:
パターン1:分子が分母の微分
∫f'(x)/f(x)dx = ln|f(x)| + C の形
例題:∫2x/(x²+1)dx
- 分母 x²+1 の微分は 2x(分子と一致)
- したがって、∫2x/(x²+1)dx = ln(x²+1) + C
パターン2:分子が分母の微分の定数倍
∫(k・f'(x))/f(x)dx = k ln|f(x)| + C の形
例題:∫6x²/(2x³+5)dx
- 分母 2x³+5 の微分は 6x²(分子と一致)
- したがって、∫6x²/(2x³+5)dx = ln|2x³+5| + C
パターン3:分子の調整が必要な場合
例題:∫x/(x²+1)dx
- 分母 x²+1 の微分は 2x
- 分子を調整:∫x/(x²+1)dx = (1/2)∫2x/(x²+1)dx = (1/2)ln(x²+1) + C
部分分数分解との組み合わせも重要なテクニックです。複雑な分数関数は、まず部分分数に分解してから個別に置換積分を適用することで解決できる場合があります。
有理関数の置換積分では、分母の次数と分子の次数の関係を確認し、必要に応じて多項式の長除法を使用してから置換積分を適用することも重要なテクニックの一つです。
よくある置換積分の問題パターン
置換積分の学習を効率的に進めるためには、よく出題される問題パターンを理解し、それぞれに対する解法アプローチを身につけることが重要です。ここでは、試験や入試で頻出する問題パターンを分類し、具体的な解法方法を詳しく解説します。
合成関数型の置換積分問題
合成関数型の置換積分は、最も基本的でありながら応用範囲の広い問題パターンです。f(g(x))・g'(x) の形を見つけることが解決の鍵となります。
基本パターンの分類:
タイプA:多項式の合成
∫(ax+b)ⁿdx の形の問題
例題:∫(3x+2)⁵dx
- u = 3x+2 とおく
- du = 3dx より dx = du/3
- ∫(3x+2)⁵dx = ∫u⁵・(du/3) = (1/3)・(u⁶/6) + C = (3x+2)⁶/18 + C
タイプB:根号を含む合成
∫√(ax+b)dx の形の問題
例題:∫√(2x+1)dx
- u = 2x+1 とおく
- du = 2dx より dx = du/2
- ∫√(2x+1)dx = ∫u^(1/2)・(du/2) = (1/2)・(2u^(3/2)/3) + C = (2x+1)^(3/2)/3 + C
タイプC:複雑な合成関数
∫f(x)・(g(x))ⁿ・g'(x)dx の形
例題:∫x(x²+1)⁴dx
- u = x²+1 とおく
- du = 2x dx より x dx = du/2
- ∫x(x²+1)⁴dx = ∫u⁴・(du/2) = (1/2)・(u⁵/5) + C = (x²+1)⁵/10 + C
合成関数の識別方法は、以下の手順で行います:
- 積分式の中で最も複雑な部分を特定
- その部分の微分が他の部分に含まれているかチェック
- 含まれている場合は置換積分を適用
- 含まれていない場合は他の積分手法を検討
三角関数の特殊パターン
三角関数の置換積分には、三角関数の性質を活用した特殊なパターンがあります。これらのパターンを理解することで、複雑に見える問題も効率的に解くことができます。
パターン1:sin x・cos x の積の形
積分形式 | 置換方法 | 計算例 |
---|---|---|
∫sinⁿx cos x dx | u = sin x | ∫sin³x cos x dx = ∫u³du |
∫sin x cosⁿx dx | u = cos x | ∫sin x cos³x dx = -∫u³du |
パターン2:tan x を含む積分
例題:∫tan x dx
- tan x = sin x / cos x と変形
- u = cos x とおくと du = -sin x dx
- ∫tan x dx = ∫(sin x / cos x)dx = ∫(-1/u)du = -ln|u| + C = -ln|cos x| + C
パターン3:逆三角関数を含む積分
例題:∫x/√(1-x²) dx
- u = 1-x² とおく
- du = -2x dx より x dx = -du/2
- ∫x/√(1-x²) dx = ∫(-1/2)・(1/√u)du = -√u + C = -√(1-x²) + C
三角関数の恒等式を活用したパターンも重要です:
- sin²x + cos²x = 1
- 1 + tan²x = sec²x
- 1 + cot²x = csc²x
これらの恒等式を使って積分式を変形し、置換積分が適用しやすい形に変換することも有効なテクニックです。
指数・対数関数の応用パターン
指数・対数関数の置換積分では、これらの関数の特殊な性質を活用した解法が重要になります。
指数関数の応用パターン
パターン1:指数部分に変数を含む場合
例題:∫2x・e^(x²+1) dx
- u = x²+1 とおく
- du = 2x dx
- ∫2x・e^(x²+1) dx = ∫e^u du = e^u + C = e^(x²+1) + C
パターン2:指数関数の分数形
例題:∫e^x/(e^x + 1)² dx
- u = e^x + 1 とおく
- du = e^x dx
- ∫e^x/(e^x + 1)² dx = ∫(1/u²)du = -1/u + C = -1/(e^x + 1) + C
対数関数の応用パターン
パターン1:対数の引数部分を置換
例題:∫1/(x ln x) dx
- u = ln x とおく
- du = (1/x) dx
- ∫1/(x ln x) dx = ∫(1/u) du = ln|u| + C = ln|ln x| + C
パターン2:対数と多項式の組み合わせ
例題:∫x ln(x²) dx
- ln(x²) = 2ln|x| を利用
- 部分積分または置換積分を適用
複合関数の判別方法:
- 指数関数:指数部分が複雑な場合、その部分を置換
- 対数関数:引数部分が複雑な場合、その部分を置換
- 組み合わせ:複数の関数が組み合わさっている場合、最も複雑な部分から順次処理
これらのパターンを理解し、練習を重ねることで、置換積分の技術を確実に身につけることができます。
置換積分でつまずきやすいポイントと対策
置換積分は多くの学生にとって難しい単元の一つです。しかし、つまずきやすいポイントを事前に理解し、適切な対策を講じることで、確実に習得することができます。ここでは、実際の学習現場でよく見られる課題と、それらを克服するための具体的な方法を紹介します。
置換する部分の選択ミス
置換積分で最も多い失敗は、置換する部分の選択を間違えることです。正しい置換を選択するためには、積分式の構造を正確に理解する必要があります。
よくある選択ミスのパターン:
ミスパターン1:複雑な部分を無条件に置換
例:∫x²(x³+1)dx において、x³+1 を置換してしまう
この場合、u = x³+1 とおくと du = 3x²dx となりますが、積分式には x² しか含まれていないため、完全な置換ができません。
正しいアプローチ:
- 積分式を注意深く観察
- 置換候補の微分が積分式に含まれているかチェック
- 含まれていない場合は、定数倍で調整可能かを確認
ミスパターン2:置換後の式が複雑になる
例:∫sin(x)cos(x)dx において、cos(x) を置換する
u = cos(x) とおくと du = -sin(x)dx となり、∫sin(x)cos(x)dx = -∫u du となります。しかし、この場合は u = sin(x) と置換する方が一般的です。
対策方法:
- 微分との対応を確認:置換候補 g(x) の微分 g'(x) が積分式に含まれているかチェック
- 複数の置換を検討:一つの置換がうまくいかない場合、別の部分を置換してみる
- 置換後の簡単さを評価:置換後の積分式がより簡単になるかを確認
効果的な選択のためのチェックリスト:
- 合成関数の外側の関数の引数部分
- 指数関数の指数部分
- 対数関数の真数部分
- 分数の分母で、その微分が分子に含まれる部分
変数変換の計算ミス
変数変換は置換積分の核心部分であり、ここでの計算ミスは答えの間違いに直結します。正確な変数変換を行うための注意点と対策を詳しく解説します。
よくある計算ミスのパターン:
ミス1:微分の計算間違い
u = x²+1 の時、du/dx = x と間違える(正しくは du/dx = 2x)
対策:
- 微分公式を確実に覚える
- 合成関数の微分(連鎖律)を復習する
- 計算後に検算を行う習慣をつける
ミス2:dx の置き換え忘れ
u = x²+1, du = 2x dx として、∫f(x)dx の dx 部分を du で表現し忘れる
対策:
- du = g'(x)dx の関係から dx = du/g'(x) を明確に求める
- 積分式のすべての x と dx を u と du で表現する
- 置換後の式に x が残っていないかチェックする
ミス3:定積分での積分区間の変換忘れ
定積分 ∫[a to b] f(g(x))g'(x)dx において、積分区間を [g(a) to g(b)] に変換し忘れる
対策のための計算手順:
- 置換式の明記:u = g(x) を明確に書く
- 微分の計算:du/dx = g'(x) を正確に計算
- dx の表現:dx = du/g'(x) を求める
- 完全な置換:すべての x, dx を u, du で表現
- 区間の変換:定積分の場合は積分区間も変換
逆置換での間違いと注意点
逆置換は置換積分の最終段階で行う重要な操作ですが、ここでのミスも非常に多く見られます。正確な逆置換を行うための注意点を詳しく説明します。
よくある逆置換のミス:
ミス1:置換式を忘れる
u で積分した後、u = g(x) の関係を使って x に戻すことを忘れる
例:∫2x(x²+1)³dx で u = x²+1 として ∫u³du = u⁴/4 + C まで計算したが、u = x²+1 を代入し忘れる
正しい最終答え:u⁴/4 + C = (x²+1)⁴/4 + C
ミス2:定積分での置換区間の処理
定積分で置換した場合、元の積分区間に戻すか、置換後の区間で計算するかの判断ミス
対策方法:
方法1:置換区間で計算
∫[a to b] f(g(x))g'(x)dx = ∫[g(a) to g(b)] f(u)du として計算し、逆置換は不要
方法2:元の区間で計算
∫f(u)du を先に計算してから逆置換し、元の積分区間 [a, b] で定積分を計算
ミス3:積分定数の処理
不定積分において積分定数 C を忘れる、または重複して付ける
対策のためのチェックポイント:
- 置換式の記録:u = g(x) を計算途中で明確に記録しておく
- 段階的な確認:各段階で何をしているかを明確にする
- 最終チェック:答えを微分して元の被積分関数になるかを確認
実践的な対策法:
対策1:体系的な解答の書き方
置換:u = g(x)
微分:du = g'(x)dx
変換:[積分式の変換過程]
積分:[u に関する積分の計算]
逆置換:[u を x に戻す過程]
対策2:検算の習慣化
最終答えを微分して元の被積分関数になることを確認する習慣をつける
対策3:定積分の場合の統一ルール
定積分では置換後の区間で計算することを基本ルールとし、逆置換を避ける
これらの対策を実践することで、置換積分での計算ミスを大幅に減らすことができます。特に、各段階での確認を怠らないことが、正確な計算につながります。
置換積分の練習問題と解答例
置換積分の技術を確実に身につけるためには、段階的な練習が不可欠です。ここでは、基本レベルから応用レベルまで、体系的に配列された練習問題を通じて、実践的な解法能力を養います。
基本レベルの練習問題
基本レベルでは、置換積分の基本的な考え方と計算手順を確実に習得することを目標とします。まずは簡単な問題から始めて、置換積分の流れに慣れることが重要です。
問題1:∫(2x+3)⁵dx
解答プロセス:
- 置換:u = 2x+3
- 微分:du = 2dx より dx = du/2
- 変換:∫(2x+3)⁵dx = ∫u⁵ · (du/2) = (1/2)∫u⁵du
- 積分:(1/2) · (u⁶/6) = u⁶/12
- 逆置換:(2x+3)⁶/12 + C
問題2:∫xe^(x²)dx
解答プロセス:
- 置換:u = x²
- 微分:du = 2x dx より x dx = du/2
- 変換:∫xe^(x²)dx = ∫e^u · (du/2) = (1/2)∫e^u du
- 積分:(1/2)e^u
- 逆置換:(1/2)e^(x²) + C
問題3:∫sin(3x)dx
解答プロセス:
- 置換:u = 3x
- 微分:du = 3dx より dx = du/3
- 変換:∫sin(3x)dx = ∫sin(u) · (du/3) = (1/3)∫sin(u)du
- 積分:(1/3)(-cos(u)) = -(1/3)cos(u)
- 逆置換:-(1/3)cos(3x) + C
基本レベルのポイント:
- 置換の選択:最も複雑な部分(括弧の中、指数部分など)を置換する
- 微分の正確性:du/dx の計算を正確に行う
- 完全な変換:dx を du で表現することを忘れない
- 逆置換の確実性:最後に u を元の変数に戻すことを忘れない
中級レベルの練習問題
中級レベルでは、より複雑な関数の組み合わせや、判断が必要な問題に取り組みます。ここでの練習により、実際の試験で出題される標準的な問題に対応できる力を身につけます。
問題4:∫x√(x²+1)dx
解答プロセス:
- 置換:u = x²+1
- 微分:du = 2x dx より x dx = du/2
- 変換:∫x√(x²+1)dx = ∫√u · (du/2) = (1/2)∫u^(1/2)du
- 積分:(1/2) · (2u^(3/2)/3) = u^(3/2)/3
- 逆置換:(x²+1)^(3/2)/3 + C
問題5:∫cos²x sin x dx
解答プロセス:
- 置換:u = cos x
- 微分:du = -sin x dx より sin x dx = -du
- 変換:∫cos²x sin x dx = ∫u² · (-du) = -∫u²du
- 積分:-u³/3
- 逆置換:-cos³x/3 + C
問題6:∫e^x/(e^x + 1)dx
解答プロセス:
- 置換:u = e^x + 1
- 微分:du = e^x dx
- 変換:∫e^x/(e^x + 1)dx = ∫(1/u)du
- 積分:ln|u|
- 逆置換:ln(e^x + 1) + C
中級レベルの解法ポイント:
問題タイプ | 置換のコツ | 注意点 |
---|---|---|
根号を含む問題 | 根号の中身を置換 | 指数の変換に注意 |
三角関数の積 | 微分の関係を利用 | 符号の変化に注意 |
分数関数 | 分母を置換 | 対数積分の形を認識 |
問題7:∫2x/(x²+4)dx
解答プロセス:
- 分析:分母の微分 d/dx(x²+4) = 2x が分子と一致
- 置換:u = x²+4
- 微分:du = 2x dx
- 変換:∫2x/(x²+4)dx = ∫(1/u)du
- 積分:ln|u|
- 逆置換:ln(x²+4) + C
応用レベルの練習問題
応用レベルでは、複数の技法を組み合わせたり、一見して置換積分が適用できるかどうか判断が難しい問題に取り組みます。これらの問題を通じて、数学的な洞察力と問題解決能力を向上させます。
問題8:∫x²e^(x³)dx
解答プロセス:
- 置換:u = x³
- 微分:du = 3x² dx より x² dx = du/3
- 変換:∫x²e^(x³)dx = ∫e^u · (du/3) = (1/3)∫e^u du
- 積分:(1/3)e^u
- 逆置換:(1/3)e^(x³) + C
問題9:∫sin(ln x)/x dx
解答プロセス:
- 置換:u = ln x
- 微分:du = (1/x) dx
- 変換:∫sin(ln x)/x dx = ∫sin(u) du
- 積分:-cos(u)
- 逆置換:-cos(ln x) + C
問題10:∫x(2x+1)^(1/2) dx
この問題は置換積分だけでは解けないため、部分積分との組み合わせが必要です:
解答プロセス:
- 置換:u = 2x+1 より x = (u-1)/2, dx = du/2
- 変換:∫x(2x+1)^(1/2) dx = ∫((u-1)/2) · u^(1/2) · (du/2)
- 展開:(1/4)∫(u-1)u^(1/2) du = (1/4)∫(u^(3/2) – u^(1/2)) du
- 積分:(1/4)[2u^(5/2)/5 – 2u^(3/2)/3]
- 逆置換:(1/4)[2(2x+1)^(5/2)/5 – 2(2x+1)^(3/2)/3] + C
応用レベルでの重要ポイント:
- 複数の手法の組み合わせ:置換積分だけでなく、部分積分との組み合わせも考慮
- 置換の妥当性判断:すべての問題が置換積分で解けるわけではない
- 計算の複雑さ管理:長い計算でもミスしないよう段階的に進める
- 検算の重要性:最終答えを微分して元の関数になることを確認
定積分の練習問題
問題11:∫[0 to 1] 2x(x²+1)³ dx
解答プロセス:
- 置換:u = x²+1
- 積分区間の変換:x = 0 のとき u = 1、x = 1 のとき u = 2
- 微分:du = 2x dx
- 変換:∫[1 to 2] u³ du
- 積分:[u⁴/4][1 to 2] = 16/4 – 1/4 = 15/4
これらの練習問題を通じて、置換積分の様々なパターンに対応できる力を身につけることができます。重要なのは、各問題で使用した置換の理由と手順を理解し、類似の問題に応用できるようになることです。